読書離れについて|現状や理由・読書の必要性について
「読書離れ」とは、多くの人々、特に若者を中心に、読書をする機会や習慣が減少している状態を指します。文化庁の調査では、成人(16歳以上)の約3人に2人が月に1冊も本を読まないという結果が出ており、この傾向は過去最高を記録しています。本記事では、この「読書離れ」の現状と背景、そしてそれが社会に与える影響、さらには誤解されがちな子どもの読書習慣について深く掘り下げます。

読書離れの現状
- 成人における読書率の低下
文化庁が2024年9月17日に公表した令和5年度「国語に関する世論調査」によると、1か月に1冊も本を読まないと答えた人の割合が62.6%に上り、過去最高を記録しました。この調査は、日本の文化行政を所管する文化庁が実施しており、電子書籍を含む活字の書籍を対象としています - 読書量の減少
読書量が「減っている」と回答した人も過去最高を記録しており、読書習慣そのものが失われていると考えられます - 書店の減少
全国の書店数は、この10年間で約3割減少しており、2014年度の1万4658店舗から2024年度には1万417店舗となっています
読書離れの主な理由
読書離れが進行する背景には、現代社会特有の複数の要因が挙げられます。
- 情報機器の普及と利用時間の増加
スマートフォン、タブレット、パソコンなどの情報機器に時間を取られることが、読書量が減少した理由のトップに挙げられます。多くの人が携帯やSNSで手軽に情報を得ることに慣れています - 多忙な生活
仕事や勉強が忙しく、読書に充てる時間がないと感じる人も多くいます - 他の娯楽との競合
インターネット上の短文情報や動画など、手軽に楽しめる他の娯楽が読書の時間を奪っています - 効率性の重視
現代では、情報を効率的かつスピーディーに得ることを重視する傾向があり、まとまった文章を読む読書は、情報収集としては非効率的と捉えられる場合があります。文芸評論家の三宅香帆氏は、インターネットで知りたいことをすぐに調べられる現代人にとって、本が提供する「なぜこれが起こったのか」といった周辺情報は「ノイズ」に感じられてしまうと指摘しています - 短文文化の影響
インターネットやSNSの普及により、短く簡潔な文章を読むことに慣れてしまい、長文を読み解く能力が低下しているという指摘もあります
子どもの読書離れは本当か?
よく「子どもの本離れ」あるいは「若者の読書離れ」と言われますが、この認識は必ずしも正しくありません。全国学校図書館協議会が毎年実施する「学校読書調査」の結果がこれを裏付けています。
- 小学生・中学生の読書量増加
小学生の書籍の月間読書冊数は2024年に13.8冊と過去最高を更新し、1990年代の約2倍に増加しています。中学生も月4.1冊と、かつての約2倍読んでいます - 高校生の読書量は横ばい
高校生の読書冊数は1960年代後半以降、月1冊台で推移しており、大きく増減していません。不読率(読書冊数0冊の割合)も2000年代以降は改善しています - 大人も高校生と同じくらい本を読まない
文化庁の調査でも、年齢による読書量の差はほとんどなく、大人も高校生と同じくらい本を読まない傾向にあります。したがって、「若者は本を読まない」と決めつけるのは間違いです
薄い本について
「読んでいる本が薄い」という批判もよく聞かれますが、児童・生徒がよく読んでいる本のページ数に関する定量的な調査は行われていません。むしろ、言語学者で教育学者のスティーブン・クラッシェンの研究によれば、好きな本を自由に読ませた方が学力の獲得にとっても良いとされています。
- 好きな読書が学力向上に繋がる
コミックやティーン向けロマンスなど、大人が「しょうもない」と思うような本を読んでいる子どもも、実際には他の本も読んでおり、そうした本を置く図書館は来館者数やコミック以外の貸し出しも増加します - PISA調査との関連
OECD加盟国の15歳を対象にした学習到達度調査PISAの読解リテラシーのスコアと、夢中になって読んだ経験に相関があることが示されています - 探究学習との関連
「探究学習」では、個人の興味や関心に基づいてテーマを選定することが望ましく、読書はその探究したい対象を見つける良い機会となります
読書離れの弊害(読書の必要性)
読書離れが進むことによる社会的な弊害も指摘されています。
- 多様性の欠如と情報環境の変化
文芸評論家の三宅香帆氏は、SNSや短い動画ばかりに慣れると、自分の知っている範囲のことだけを楽しむ情報環境になり、世代やバックグラウンドが異なる人の意見を受け入れづらくなる危険性を警鐘しています - 「反知性主義」の台頭と対話の喪失
日本ペンクラブ副会長の山田健太氏は、「戦争を止める・平和を維持する・貧困をなくす」ためには「知」を高める必要があると提言しています。読書離れが進むことで、複雑なことを考えなくなり、他者を知る必要がないと考える「反知性主義」が台頭し、対話が失われることが社会の負の側面の一つであると述べています - 歴史的背景と現代の皮肉
歴史的にナチスドイツの焚書事件や中国の文化大革命、戦前・戦中の日本の発禁処分など、権力による思想統制のために本が排除されてきた事例があります。現代では、権力に強制されることなく、私たち自身が自ら本を手に取らなくなっているという皮肉な状況にあります
読書離れは悪なのか?
現代において「読書離れ」を嘆くことの意義についても議論があります。
- 活字を読む媒体の変化
「読書」を活字を読むことと定義するならば、多くの人が本の代わりにネット上で文章を読んでおり、単に媒体が紙から電子に変わっただけであり、実質的な「活字離れ」は発生していないという見方もあります - 読書の権威性
昔から読書は知的で格調高い活動であるという権威がありましたが、これは識字率向上やエリート層の教養、唯一の情報源であった歴史が作り上げた「お墨付き」に過ぎないという意見もあります - 紙の本の価値と継承の義務
しかし、紙の本には美しい装丁やページをめくる楽しみ、データにはない検索性や書き込みやすさといった嗜好品的な優位性があります。データとしての文章にはない本の楽しさを知る者として、この楽しさを次世代に伝えていく義務があるという意見も強く存在します
読書離れ防止に向けた取り組み
文部科学省は、読書離れの影響で書店の閉店が相次ぐ現状を受け、図書館と書店の連携による読書推進や地域活性化の取り組 みを支援する方針を固めています。例えば、インターネットで予約した市立図書館の書籍の受け取りや返却を地元の書店でも可能にする取り組みや、閉館後の図書館での特別おはなし会やお泊り会などが全国各地で行われています。10月27日は「読書の日」、10月27日から11月9日までは読書週間に定められており、読書に親しむ良い機会となっています。
用語解説
- 文化庁